目次
はじめに
今日できなかった箇所が後日苦も無くできるようになった経験はありませんか。
「なぜあの時はすごく苦労したのに今はすんなり弾けるのだろうか?疲れていたのかな?」
こういった体験は、ピアノを続けている多くの人にとって身に覚えがあることなのではないでしょうか。
たくさん練習をしてもイマイチうまくならない、「停滞期」の打破に効果的かもしれない記憶のメカニズムを、今回はお話ししたいと思います。
記憶のメカニズム
「記憶」がピアノの上達とどう結びつくのでしょうか。早速みていきましょう。
レミニセンス現象
反復練習で手の細かな動きや発音のタイミングなどは「記憶」として強化されます。
しかし「記憶直後」より「記憶から一定時間経過後」の方がよく記憶を想起できる現象があります。
これを『レミニセンス現象』と言います。
あるものを記憶した場合、記銘後、時間の経過とともに保持量が低下するのが普通であるが、記憶材料その他の条件によっては,記銘直後よりもしばらく時間が経過したほうが、よく再生が行われることがある。このような現象をレミニセンスという。
ブリタニカ国際大百科事典小項目事典
一定時間の経過により
- 集中力の低下
- 飽き
といった記憶の定着を邪魔する要素をレミニセンスは排除してくれます。
「睡眠」が鍵
レミニセンス現象を加速させる方法の一つが「眠ること」。
「睡眠」というと身体を休める効果にフォーカスを集めがちですが、実は脳が「記憶を整理する」時間でもあります。
私たちが日中活動しているときよりも何倍も脳は睡眠中に活動しているのです。
「記憶」というと時間が経つほど薄れていくものと思ってしまいますが、実は睡眠を通して整理されているのです。
効果を高めるポイント
レミニセンス現象を引き起こすには「睡眠」が重要ということはわかりましたが、さらにその効果を高めるポイントがあります。
それは『寝る直前にしっかりと練習』すること。
寝る直前までちゃんと練習していた翌日にレミニセンス現象の効果はグッと高まります。
「しっかりと」練習することが重要で、漫然とやっても脳は反応してくれません。
なるべく練習後はテレビなどの刺激を受けないですぐに寝るのも重要です。
でも、待ってください。
「そんな寝る前の夜中まで音出しなんかできないよ」
「ご近所と演奏は午後8時までと決めているし」
そんな方も多いでしょう。
そういう場合は思い切って寝る前練習用に、安価な電子ピアノを購入するというのも手です。これならヘッドホンやイヤホンをつけて夜に練習できますね。上達するための自己投資だということで検討してみてはいかがでしょうか。
最後に
今回は、練習成果を定着させる「睡眠」や「レミニセンス現象」について考えいきました。
なかなかうまく演奏ができないがためにストイックに同じ練習をやり続けていると、脳が無意識に疲弊し注意が散漫になり、結果的にパフォーマンスの低下を招きます。
『A watched pot never boils.(見つめる鍋は煮えない)』
- 早く煮えないかなと絶えず鍋の蓋をとっていては、いつまで経っても煮えない。
- いったん忘れて別のことをしているといつの間にか煮えている。
というヨーロッパのことわざだそうです。
これはピアノにも当てはまるでしょう。
上手になりたいからバリバリ練習して四六時中ピアノのことを考えている状態は、一見立派なことに思われますが、実はそれは脳にとっては情報だけ過剰に仕入れて疲弊している状態と言えます。
疲弊していては整理能力が低下し、不要な情報と必要な情報を選別せずして溢れ出して忘れてしまうということになりかねないですね。過剰な練習は、上達に逆効果になっていることもあるということですね。
練習後すぐに寝るまでいかないまでも、「練習と休憩の緩急」をしっかりとつけることはできると思います。こういった積み重ねが上達の鍵になりそうですね。