目次
はじめに
突然ですが、『ファンキー(funky)』という言葉をご存知でしょうか。
日本語での「ファンキー」の意味は、「ど派手な」「独創的な」「型破りな」「イカした」「カッコいい」です。
この「ファンキー」という言葉は、音楽のシーンでも時々使われる用語です。
しかし、その意味とかニュアンスをあまり理解しないで使われている場合も多く見られます。
今回はこの「ファンキー」を少し考えていきたいなと思います。また、ピアノでいう「ファンキーな演奏」とは一体どんなことを指すのでしょうか。
英語の意味
英語では特に、長い歴史の中でいろんな意味が含まれるようになってきました。まずは語源から最新の意味までをまとめて考えていきたいと思います。
元々の意味は「悪臭」
「funky」は「funk」を形容詞の形にしたものです。
「funk」は元々(今もですが)「悪臭(体臭)」という意味です。
語源はラテン語の「fumigare」(たばこを吸うの意味)です。これがフランス語の「fungiere」になり英語になりました。
アメリカで、ファンクと言う言葉は、「体臭」という意味から転じて、もともとは「土俗的」などの意を含む俗語(スラング)でした。
音楽ジャンル「ファンク」ができた
アメリカでは「ファンク」は「土俗的」という意味から派生して、黒人生活全般を指す面も出てきました。
『ファンキー』とは元々は主に黒人たちの弾く「ファンキー・ジャズ」 (※ジャズ・ファンクとは異なる音楽ジャンル)に対して使われていた言葉でした。
「完成していないけれど何らかの自由さや心地よさ」を感じる黒人たちのジャズ演奏に対し、一言で言い表せない賞賛や軽蔑などの複雑なニュアンスを含んだ言葉となっていきました。
それから1960年台になると、アフリカ系アメリカ人が、ソウルミュージック、ジャズ、リズム・アンド・ブルースなどを組み合わせた新しい音楽が台頭してきました。
「funk」は「臭い」という意味から「土臭い」「素朴で洗練されていない」などの意味を持つようになり、この新しいジャンルの音楽を「Funk Music」と名付けた、と言われています。
アフリカ系アメリカ人の体臭が臭いということで揶揄して「Funk Music」と名付けられたという説も存在します。
「Funk Music」のようなサウンドを「funky」と形容詞で修飾するようになり、「funky」は「(音楽が)ファンキーな」となりました。
「素晴らしい」という訳語がある一方で、「悪臭のする」という訳語もあり、簡単には日本語訳できない深い意味が混じっています。その使う人によってその意味は180度違ったニュアンスを帯びてきます。
転じて「イカした」という意味が生まれた
「Funk Music」の「funky」から転じて生まれた意味が、「カッコいい、イカした、型破りな」という意味です。
これが日本語の「ファンキー」でも使われてる意味ですね。
「臭い」と「カッコいい」で全く逆の意味ですが、ネイティブは文脈で判断するので、混同することはありません。
ファンクミュージック
「Funk Music」の有名なアーティストから紐解いていくと、ファンキーとはなんぞやがわかってくるのではないでしょうか。
海外のアーティスト
1960年代ジェームス・ブラウンが最初にファンクミュージックを、画一させたと言われています。
ジェームス・ブラウンのファンクは、西アフリカのポリリズムと、戦前アメリカのアフロアメリカンによるワーク・ソングからの影響を受けたサウンドが特徴です。
ファンクはジャズ・シーンに大きく影響を与えており、マイルス・デイヴィス、ハービー・ハンコック、ジミー・スミスなどがアルバムで、ファンクを取り入れた楽曲を演奏し話題となりました。これらはジャズ・ファンクとも形容され、世の中に定着してきました。
また、ローリングストーンズの「ホットスタッフ」などファンク・ロックと呼ばれるジャンルも流行りました。
日本のアーティスト
日本では、スガシカオや在日ファンクなどの有名なアーティストは、ファンクミュージックのテイストを含んだ楽曲で馴染みが深いです。
「ファンキー」とは
ファンク音楽の特徴を紐解くと、ファンキーな演奏が何かが見えてきます。
さて、少し突っ込んで考えていきましょう。
1拍目を強調した16ビートのリズム
まず、リズムが特徴的でしょう。特にギターのカッティングが特徴です。アクセントが1拍目の他、裏拍に入ることがあります。これに伴って、ドラムやベースも裏拍にアクセントを入れるようなリズムで演奏します。しかも、機械的に音を刻むより、少しスイングしたりしなかったりする微妙な感じでリズムが多少人間臭く揺れると、ファンキーなイカしたリズムが完成します。
また、単純な構成を何度もループさせて、盛り上げるスタイルが基本です。リフレインされるリズムが気持ちよく中毒性があります。スパイスとして、キメのようなフレーズを入れたり、Bメロを噛ませたり、楽器のソロを含ませたりして、アレンジをしていくライブスタイルが多いです。
鍵盤楽器は、エレピやクラビ音などで弾くことも多いですが、ギターカッティングなどを彷彿させる16刻みの「イカした」揺れになっていることがファンキーに弾くための秘訣といったところでしょう。
テンション音
テンション音をふんだんに使っています。主なコード音に対して、セブンスやメジャーセブンス、ナインスなどの音を入れることが多いです。
また、ドミナント音などのセブンスコードに普段あまり入らないテンション音を構成として入れることもあります。代理コードなども用いられます。テーマからドミナント音に代理コードを用いることも多く、そのコード上でメロディが組まれていることで特徴的な楽曲が完成するのです。
鍵盤楽器は、バッキングにこういった、美味しいテンション音を多く含んだ和音や、例えば、スパイス的に構成が変わる前後にオシャレな音やリフをそれとなく仕込ませると、ファンキーな要素を感じることになります。
アフリカ・ラテン系のリズム、レゲエの要素
現在では、ジャズやゴスペル、ソウルミュージックなどの要素を土台としながら、アフリカ・ラテン系のリズムを融合させたり、レゲエの要素を入れた一風変わったファンクミュージックが人気になっているようです。
様々なジャンルのリズムや歌い回しを混ぜて今も旬な音楽として生き続けているのですね。
ここにも鍵盤楽器で弾く際のファンキーさにヒントがあるような気がします。様々なジャンルのリズムやノリを研究することで、よりファンキーなエッセンスを含むことが可能であると思います。
最後に
ファンキーとはなんぞやというお話を今回は考えていきました。一人で演奏する場合でも、何か演奏につまらなさを感じたら、こういったジャンルを聞いてみるだけでも奥深いエッセンスを身体にインストールすることが可能です。
普段はあまり聞かないジャンルであるかもしれませんが、現代のJPOPにはこういったファンキー要素をたくさん含んだ楽曲がたくさんあるので、古臭さをあまり感じないでしょう。逆にちょっと「古臭い」方がファンキーなんです。このニュアンス、少しわかるようになってきましたか!?