グルーヴってなに?ピアノの演奏でグルーヴ(groove)感を出すためにはどうすればいいのか?

はじめに

「グルーヴ(groove)」という言葉をご存知でしょうか?

ピアノを演奏する人ならば、音符のタイミングに合わせて演奏できるようになるために、必ず基礎を学ぶはずですが、実は、機械的に「完ぺきなテンポ」は、人間の演奏では不可能です。どんなに上手い人でもミリ単位で僅かにずれることは、お分かりになられるでしょう。

この「テンポのずれ」は一例ですが、このような僅かな人間的なテンポや強弱のずれが、逆に生み出す高揚感のようなものを「グルーヴ」と呼びます。

今回は、「グルーヴ」について少し考えていきたいなと思います。

グルーヴとは

『グルーヴ』の語源はアナログレコード盤の音楽を記録した「溝」を指す言葉です。その波、うねりの感じからジャズ、ファンク、ソウル、R&Bなどブラックミュージックの音楽・演奏に関する表現に転じた言葉です。ある種の高揚感を指しますが、具体的な定義はない不思議な言葉です。

現在は、ポピュラー音楽全般で用いられており、日本語では「ノリ」という言葉と近いニュアンスで使われることが多いです。

ピアノでグルーヴ感がある演奏とは

ある研究によると、スティヴィー・ワンダーの「Superstition」が最も「グルーヴ」を体現した楽曲であると言われているようです。

鍵盤楽器でグルーヴィ(「グルーヴ」の形容詞形)な演奏とは、ここにヒントがあるのではないかと思います。

いわゆる音を前に「食う」ことを表す「シンコペーション」や、音符の最初の長さを長めにとって2つめの音符を短くする「スウィング」が要素として入っている等、グルーヴを感じるための手法については近年研究され、だんだんと明らかにされてきました。

しかし、こういった要素を機械的に入れるのではなく、意図せずに入っていて、楽曲の中に心地いい「揺れ」のようなものが入っているときに、グルーヴが生まれます。

最近は、DTM(デスクトップミュージック)の発展によって、機械的に、意図していないかのようなグルーヴを仕込ませた楽曲を作ることも可能です。

近年、当たり前のようにグルーヴを意図的に仕込ませる手法を取り入れて、楽曲が作られるようになってきたといっても過言ではないでしょう。

ピアノの演奏でグルーヴを入れる第一歩としては、まず寸分狂わずリズムを演奏するのではなく、「シンコペーション」や「スウィング」の要素が「スパイス的に」入っていることが重要です。

「スパイス的に」と言うのは、あんまり分かりやすく「シンコペーション」や「スウィング」の要素を入れ込むと、逆に下手くそな演奏に聞こえかねないからです。

絶妙な感じで機械的に弾かない、少し、ずれているところに「グルーヴ」が存在します。

クラシックピアノにもグルーヴがある

では、楽譜通りに弾かなくてはいけないクラシックピアノにはグルーヴは存在しないのではないかと思われる方も多いと思います。

しかし、私が思うにクラシック音楽にもグルーヴが存在します。

同じ曲でも、プレイヤーによって微妙に歌い回しの感覚が違うため、ミリ単位で音の長さや強弱は違ってきます。この微妙なズレがグルーヴにつながってくるのです。

グレン・グールド(Glenn Herbert Gould)というカナダの偉大なピアニストはこの議論にヒントを与えてくれるような気がします。バッハを主軸に、ある種の楽譜通りには弾かない興味深い演奏をしたことで有名です。賛否分かれることが多いですが、クラシック音楽でグルーヴの体現を目指しているのではないかと感じます。

楽譜が指定したテンポやアーティキュレーション、強弱、装飾音符を勝手に変更して演奏をします。

そしてなんと、ハミングしながら(鼻歌を歌いながら)ピアノを弾きます。

「正確性」より「ノリ」に振り切ってクラシック音楽を追求したといっていいのではないでしょうか。クラシック音楽の中にも「グルーヴ」を内在させるられる可能性を見出してくれたといっていいでしょう。

ピアノでグルーヴを出すには

では、ピアノでグルーヴを出すにはどうすればいいでしょうか。考えていきましょう。

シンコペーション

音が「食う」ところ(シンコペーション)をいかに気持ちよく弾けるかがグルーヴに深く関わっているといっても過言ではありません。

シンコペーションの部分は、より正確に少しアクセント気味の方がグルーヴ感が出ることが多いと個人的には思います。

こういった「シンコペーション」する部分は楽曲のノリを左右するいわゆる「オイシイ」部分なので、絶対に押さえておくことが大切です。

よくわからない時は、最初は「より正確に」「少しアクセント気味に」練習してみてはいかがでしょうか。そして、徐々に自分の歌い回しに変えていくと良いでしょう。ノリが気持ちいい弾き方を研究してみてください。

スウィング

ここで言う「スウィング」とは、端折って一言で言うと、『初めの音符の長さを長めにとり、ふたつめの音符を短くすること』です。

この二つ目の音が音符の書かれている部分よりわずかにずれることによって、うねりが起こってグルーヴが生まれることがあります。

遅れ方が大きいほど、ミュージシャンの間では「重い」などと表現することが多いです。

「重さ」「軽さ」は、好き嫌いがあり、またその時々でどちらが良いかは判断が分かれますが、極端に言うと、重い方がよりグルーヴィに響くことが多いです。

※ただ、重すぎるのもいけないですし、重い部分と軽い部分が混在するときにグルーヴを感じる場合も多いので一概には言えません。

アーティキュレーションや装飾音符

音楽記号(アーティキュレーション)や装飾音符は、機械的な音の並びに音楽的表情を加えたい意図で、作曲者が楽曲に仕込ませた、いわば「スパイス」のようなものです。

このスパイスを作曲者の意図を想像しながら、隠し味的に楽曲に絶妙に混ぜることができるとグルーヴ感は増していくでしょう。楽曲の「オイシイ」部分はこのスパイスが仕込まれていることが多いですので、見逃さないようにしましょう。

歌えるか・体が揺れるか・踊れるか

グレン・グールドのように鼻歌とは行かないまでも、その楽曲が「歌えるか」がグルーヴのヒントだと思います。極端なことを言うと、演奏しながら自分が鼻歌を歌って、体が揺れるか(踊れるか)どうかが「グルーヴしているかしていないか」の判断基準です。

ファンクやソウルミュージック等は野外フェスティバルやクラブ等で演奏されるときに最高に気持ち良かったりしますが、そういったところでダンサブルに演奏されるているときの楽曲を、実際に聞いて踊ってみるのも良いでしょう。そのフィーリングを身体にインストールして持ち帰り、ピアノで自分の指で再現できるかどうか、研究してみるのはいかがでしょうか。

最後に

今回はピアノを弾くときにグルーヴ感を出すためにはどうすればいいのかを考えていきました。

今のところ、グルーヴしているかどうかの判断は極めて主観的で感覚的です。(今後、研究が進むにつれてグルーブが何かと言う定義ができるかもしれませんが)

ですので、理解するのは難しいですね。

何か少しでもヒントになればと思い、その感覚的な部分をなるべく言語化してみました。

一つ言えることは、満足いくグルーヴ感が自分の弾くピアノで再現できるようになったら、音楽が楽しくてしょうがなくなります!ぜひこの感覚を掴みに行ってください!